- チーズ
- 発酵食品
- 免疫力の向上
- 生活習慣病予防
チーズは溶かすと変わる?―食品の形が腸内細菌に与える影響―
背景
チーズは、乳酸菌などの微生物の働きを利用して作られる代表的な発酵食品です。チーズの熟成中には、最初に加えたスターター乳酸菌だけでなく、非スターター乳酸菌と呼ばれる菌も増え、その風味を豊かにするだけでなく、健康に役立つ可能性も期待されています。これまでの研究では、チェダーチーズをそのまま食べた場合、試験管レベルの実験で病原性大腸菌が腸の細胞に付着するのを抑える可能性が報告されていました。しかし、私たちはチーズをそのまま食べるだけでなく、トーストやグラタンのように加熱して食べることも少なくありません。
そこで本研究では、「そのままのチェダーチーズ」と「加熱して溶かしたチェダーチーズ」が、腸内細菌叢にどのような違いをもたらすのかを比較しました。
結果
過体重または肥満の50歳以上の成人69名を対象に3グループに分け、通常の食事に加えてチェダーチーズを毎日6週間続けて食べてもらいました。
グループA(30名):
そのままのチェダーチーズ(120 g/日)、
グループB(18名):
溶かしたチェダーチーズ(120 g/日)、
グループC(21名):
チーズと同様の栄養成分を含むが、特有の食品構造を持たない対照食を摂取する(バター 49 g、カゼイン30 g、カルシウム500 mg)。

その結果、そのままのチェダーチーズを食べたグループ(A)では、腸内細菌の多様性(細菌の種類)が有意に増加し、Dorea や Bacteroides など、一部の細菌が増加しました。
一方、加熱して溶かしたチーズを食べたグループ(B)と対照グループ(C)では、このような変化は認められませんでした。
コメント
この研究で興味深いのは、同じチェダーチーズでも、「何を食べるか」だけでなく、「どのような形で食べるか」によって腸内細菌への影響が変わる可能性が示されたことです。そのままのチェダーチーズを6週間食べた人の腸内では、短鎖脂肪酸をつくる可能性がある細菌が増えるなど、腸内細菌の構成に変化が見られました。短鎖脂肪酸は腸の健康や免疫機能を維持する働きがあります。つまり、そのままのチェダーチーズは腸内環境をいい方向に変える可能性が示されました。
一方で、加熱して溶かしたチーズでは同様の効果は見られませんでした。これは有益な成分を守っているチーズの構造が壊れることで腸まで届く成分が減ったこと、加熱によって非スターター乳酸菌が死んでしまったことが考えられます。
以上より、食品の健康効果は栄養成分だけでなく、発酵や食品の構造によって左右される可能性があるといえるでしょう。
日常生活へのポイント
チーズはカルシウムやたんぱく質を含む栄養豊富な食品ですが、今回の研究は「食べ方」も健康への影響を左右するかもしれないことを示しました。もちろん、トーストやグラタンなど加熱したチーズにもおいしさや魅力があります。
一方で、サラダやサンドイッチ、おつまみなどでそのままのチーズを楽しむ機会を取り入れてみるのもよいかもしれません。ただし、この研究だけで、チェダーチーズをそのまま毎日食べれば健康になると結論づけることはできません。
腸内環境を整えるためには、チーズだけに頼るのではなく、さまざまな発酵食品をバランスよく楽しみながら、自分にあった食べ方を見つけてみてはいかがでしょうか。
引用文献
Unmelted, melted, and deconstructed Cheddar cheese: effects on the gut microbiome from a human dietary intervention study
