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発酵によって生まれる豆板醤のペプチドに秘められた抗酸化作用

背景

私たちの体内では、生命活動に伴って活性酸素が生じます。活性酸素は体を守る働きにも関わりますが、過剰に生じたり、十分に除去されなかったりすると、脂質やタンパク質、DNAなどを傷つけ、「酸化ストレス」を引き起こします。こうした酸化ストレスを抑える成分の一つとして、アミノ酸がいくつかつながったペプチドが注目されています。

発酵食品では、微生物の働きによって原料のタンパク質が細かく分解され、さまざまなペプチドが生じます。そこで本研究では、ソラマメを発酵させて作る豆板醤から新たな抗酸化ペプチドを探索し、活性酸素を消去する能力や、酸化ストレスによる細胞へのダメージを軽減する作用を調べるとともに、その作用機構を検証しました。

結果

本研究では、豆板醤から取り出したペプチドを大きさによって分けて調べたところ(GSH:抗酸化物質の比較対照、U1:大きいペプチド、U2:中程度のペプチド、U3:小さいペプチド)、分子量が小さいほど抗酸化作用が強い傾向がみられました。さらに詳しく分析した結果、7種類の新しい抗酸化ペプチドが見つかりました。

これらを人工的に合成して調べたところ、いずれも酸化を引き起こす反応性の高い物質を抑える働きを示しました。その中から代表的な3種類のペプチドを、酸化ストレスを与えたヒト肝臓由来の細胞で調べたところ、細胞内の活性酸素や脂質の酸化によって生じる物質が減少し、細胞へのダメージが軽減されました。

また、コンピューター解析では、これらのペプチドが、細胞自身が持つ抗酸化防御の仕組みに関わるタンパク質に結合し、抗酸化防御機構を活性化する可能性も示されました。

コメント

本研究から、豆板醤の発酵過程で生じるペプチドの中に、酸化ストレスから細胞を守る可能性を持つものが存在することが示されました。興味深いのは、これらのペプチドが単に酸化を引き起こす物質を捉えるだけでなく、細胞自身が持つ抗酸化防御の仕組みに働きかける可能性も示されたことです。

しかし、本研究は実験室規模で機能を評価・推測したものであるため、実際にヒトが豆板醤を食べた時に与える影響は明らかになっていません。今後は、動物やヒトを対象にした試験を行い、より詳しく豆板醤由来のペプチドの機能を検証する必要があります。

日常生活へのポイント

豆板醤は、ソラマメを発酵させて作られる調味料です。その過程では、味や香りが変わるだけでなく、原料のタンパク質が分解され、もとの食品にはなかったさまざまなペプチドが生じます。今回の研究では、そうしたペプチドの中から、細胞を酸化ストレスから守る可能性のあるものが見つかりました。

豆板醤は炒め物やスープなど、日常の食事に取り入れやすい発酵食品です。普段使っている発酵調味料の中でも、微生物の働きによって新しい成分が次々と生み出されている−−。そんな「発酵による成分の変化」に目を向けてみると、いつもの豆板醤も少し違って見えるかもしれません。

引用文献

Identification and molecular mechanisms of novel antioxidant peptides from fermented broad bean paste: A combined in silico and in vitro study

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0308814624009464?via%3Dihub

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